エーテル美術館『ピンクの桃の木』

皆さまこんにちは。エーテルスタッフの遊佐です。

本日で連載5回目の「エーテル美術館」。花を描いた名画のエピソードのご紹介と、実際にその花を現代の私たちの暮らしになじむようにもっと気軽に、もっとコンパクトに活けてみよう、というコラムです。

今回ご紹介させていただくのはフィンセント・ファン・ゴッホ作の『ピンクの桃の木』。
昨年の夏、第1回のコラムでも登場したゴッホ。今回の作品は、3月に向けて楽しみたい、春満開の名画です。

美術館で過ごすひとときのように、のんびりとご覧になってください。


名作ぞろいのアルル時代

「ゴッホ」と聞いて思い浮かべるのは、まず『ひまわり』ですよね。
続いて、『星月夜』や『夜のカフェテラス』など…

これらの代表作はすべて、静養のために南フランスのアルルへと移住したのち、晩年の約3年間で描かれたものです。

アルル移住前、2年間だけパリに住んでいたゴッホ。
そこで流行していた印象派やジャポニズムの技法を取り入れることで才能が開花し、あの鮮やかな色彩とうねるのような筆のタッチになったのだと言われています。


手紙から読み解くロマンティックな春の絵画

ゴッホの生きた時代は1853年~1890年。今から130年以上も前になるのですね。
それだけ月日がたっているにも関わらず、年号、タイトル、エピソードに至るまではっきりと残っている作品が多いのも彼ならでは。

これらが現存しているのは、作品や日々の暮らしについて事細かに書き綴った手紙を、弟のテオ宛てに送っていたためでした。その数、なんと合計650通以上…!

画家として活動した10年の間で計算しても、月に約5通は手紙を書いていたことになります。

今回ご紹介する『ピンクの桃の木』についても、完成に向けた興奮と情熱を手紙の中で語っていました。

手紙の内容で印象的なのは「耕されたライラック色の土に、輝かしい青と白の空を背景にした2本のピンクの桃の木。おそらくこれは、私が描いた中で最高の風景だ。」と絵の出来を力説しているところ。

桃の木は時の経過とともに退色してしまっていますが、当初は空の青との対比が美しいピンク色で描かれていたようですね。(第一回でご紹介したゴッホのバラも、もとは薄ピンクだったと言われています。)

そして、「ライラック色の土」とはなんともロマンティックな例え…!

この表現には諸説あって、果樹園のそばの「ライラック畑」のことを言っているのではないかとも言われています。
でも、光を操り季節の移ろいを描く印象派の影響を受けたゴッホならば、土の色さえ春らしいライラックに見えていても、何ら不思議はないように思います。

今となっては真相はわかりませんが、こういったことに考えを馳せるのも、絵画の一つの楽しみですよね。


ひな祭りにもおすすめ ゴッホ風ブーケ

今回は、印象的だった「ライラック色の土」のロマンティックな雰囲気を自宅にも取り入れたくて、淡いライラックカラーの花瓶を使ってゴッホ風に桃の木を活けてみました。

たわわに花開いた花弁の美しさはもちろんのこと、上品な甘い香りも魅力的。
まるで部屋いっぱいに春が訪れたような気持ちになります。

嫌味のない優しい香りなので、ダイニングテーブルやベッドルームに飾るのもおすすめです。

満開の桃の木を前にして、ゴッホもきっと同じ香りを感じていたのだろう…なんて思いを馳せて。
100年以上経っても描かれた背景まで思い起こさせる絵画って、本当にロマンがありますよね。

桃の花言葉は「天下無敵」、「私はあなたのとりこ」など。まさに桃のとりこになったのでしょうか。
ゴッホは今回ご紹介した『ピンクの桃の木』以外にも、桃の木をモチーフにした別の絵を生涯で3枚も描いています。

来月3月3日がひな祭りですから、このタイミングで飾るのも素敵ですよね。

女の子のイベントとしてのイメージがありますが、もともとのひな祭りは「女性の幸せを願う日」、また「邪気を払う厄払いの日」だったのだそう。

先ほどご紹介した「天下無敵」の花言葉も、桃の木が持つ厄除けの力から来ていると言われています。

女性の方だけでなく年齢や性別を問わず縁起の良い日なので、今年のひな祭りは自宅で桃の木を飾って楽しむ、なんて過ごし方も良いかもしれませんね。


心温まる美術館の取り組み

近年、著作権の切れた美術品をpublic domain(著作権フリー)で公開する美術館が増えてきています。

今回ご紹介した『ピンクの桃の木』もその一つ。
この絵を所蔵するファンゴッホ美術館の公式サイトでは、4000点以上の作品を無料で閲覧することができます。(商用利用の際にはメールでのリクエストが必要になります。)

<ファンゴッホ美術館>の公式サイトはこちら

また、大人も子どもも楽しめるコンテンツに力を入れていて、ゴッホ作品の塗り絵のダウンロードも実施中です。

塗り絵のダウンロードはこちら

もうすぐ一年になる自粛生活…。
自宅で過ごす時間が増える中、こういった美術館の取り組みを見ると心が温まります。

「エーテル美術館」、次回の更新は3月下旬頃の予定です。
美術館に遊びに行くような気軽な気持ちで、ぜひまたご覧ください。

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