皆さまこんにちは。エーテルスタッフの遊佐です。
“花と、エーテル”新連載の「エーテル美術館」。花を描いた名画のエピソードのご紹介と、実際にその花を現代の私たちの暮らしになじむようにもっと気軽に、もっとコンパクトに活けてみよう、というコラムです。
今回ご紹介させていただく絵はフィンセント・ファン・ゴッホ作の「花瓶のバラ」。
美術館で過ごすひとときのように、のんびりとご覧になってください。
「ひまわり」とゴッホのこころの変化
先日、上野の国立西洋美術館の企画展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で、ゴッホのひまわりを見てきました。
中学生のころに損保ジャパン日本興亜美術館(現在のSOMPO美術館)で初めてひまわりを見てから、ずっと他のひまわりも見てみたかった。
実はゴッホの「ひまわり」は複数枚存在します。なじみの深い花瓶に生けられた状態の絵は6枚。それ以外のものを含めると、全部で11枚ものひまわりが発見されています。
戦火で焼失した幻の「芦屋のひまわり」も含めると、計12枚。
これらは、ゴッホがアルルでアトリエとして借りていた「黄色い家」に友人のゴーギャンを招くにあたり描いたものです。
しかし、心待ちにしていたはずのゴーギャンとの生活は開始わずか2か月で破綻します。自画像の耳の形をからかわれたことに激高したゴッホが、自らの耳を切り落とす事件を起こしたためでした。
花瓶のバラ
耳切り事件の後、サン・レミの精神療養院で約1年間過ごすことになったゴッホ。彼の代表作である「アイリス」や「星月夜」はここで生まれました。
今回のテーマ「花瓶のバラ」(メトロポリタン美術館所蔵)もサン・レミ時代の一枚。退院間際に描かれたこの絵からは、回復の喜びや希望の幸福感を感じます。
実際にゴッホはこの絵を制作中、母親に送った手紙に「庭で絵を描いたり、花の成長を見ることが自分の健康には必要だった」としたためています。花が人のこころを癒すことは、いつの時代も共通なのですね。
実は「花瓶のバラ」もひまわりと同じように似たものが2枚存在します。
ほぼ同時期に描かれたものですが、もう一枚のほうは横長で花瓶もデザインも少し違います。こちらはワシントン・ナショナル・ギャラリーで見ることができます。
ゴッホ風にバラを飾る
ゴッホの疲れたこころを癒したバラの花々。
愛や美にまつわる花言葉が多いことで知られる花ですが、淡いピンクは「誇り」、白は「深い尊敬」など、ほかにも良い花言葉をたくさん持っています。
部屋に絵画を飾ることはハードルが高く感じますが、花ならば私たちの日常にも気軽に取り入れることができそうです。 でも・・あんなに大量のバラや仰々しい花瓶は現代の私たちの暮らしにはなじみませんよね。
それならばいっそ、『白いバラと緑色の花瓶』という視覚的なイメージだけを拝借して、もっと気軽に、もっとコンパクトに”ゴッホらしい”雰囲気を楽しむのはいかがでしょうか。
ちょうどいいサイズの花瓶がなくても大丈夫。グラスや空き瓶で十分代用できます。
ちなみに今回私が”ゴッホらしい”雰囲気を感じて選んだこちらの緑色のビン、実は花瓶でもなんでもなくコンビニで買ったキレートレモンの空き瓶です!
折角花を飾るのですから、難しいことは考えず、飾る部屋やご自身の今の気分に合う飾り方で。
「はじめは白いバラを見にお花屋さんに行ったけど、ほかに気になる花を見つけた!」というのももちろんOK。
このコラムが”部屋に花を飾る”ことの一つのきっかけになればいいなと思います。 元の絵画にとらわれず、お好きな色を選んで飾ってみてくださいね。
家でもアートを楽しむ
近年、著作権の切れた美術品をpublic domain(著作権フリー)で公開する美術館が増えてきています。
今回ご紹介した「花瓶のバラ」もその一つ。
この絵を所蔵するメトロポリタン美術館の公式サイトでは、37万点以上の作品を無料で閲覧、ダウンロードすることができます。
全作品に解説がついていてとても勉強になりますし、家で過ごす時間にもぴったりなのでぜひ活用してみてくださいね。
「エーテル美術館」、次回の更新は9月上旬頃を予定しています。
美術館に遊びに行くような気軽な気持ちで、ぜひまたご覧ください。