皆さまこんにちは。エーテルスタッフの遊佐です。
本日で連載4回目の「エーテル美術館」。
花を描いた名画のエピソードのご紹介と、実際にその花を現代の私たちの暮らしになじむようにもっと気軽に、もっとコンパクトに活けてみよう、というコラムです。
今回ご紹介させていただくのはアンリ・ファンタン=ラトゥール作の『花と果物のある静物』。
フランスが認めた若きサロン画家が描いた美しい春の花々。
美術館で過ごすひとときのように、のんびりとご覧になってください。
「サロン画家」ってなんだろう
サロン画家ラトゥール。
芸術がお好きな方は聞いたことがあるかもしれませんが、そもそも「サロン」とは何のことを指すのでしょうか。
フランス語の「サロン」を日本語にすると「官展」。
この「官」とは政府のことなので、「フランス政府(国)の主催する芸術展」という意味になります。
サロンは、当時としては異例の一般人も参加できる展覧会として大変賑わいました。
そして、ここで審査員から高く評価された絵は、そのまま国が買い上げることもあったのだとか…!
国からの高評価を得たとなると、画家としても箔が付きますよね。
サロンへの出展は言わば、芸術家の登竜門。
ラトゥールは、25歳の若さでサロンに初入選し、その後もサロン常連画家として名を馳せます。
国が認めるにふさわしい技術を持った、アカデミックな画家だったのですね。
「花の画家」が描いた春のブーケ
ラトゥールは静物画を好んで描きました。花を描かせたら右に出るものはいない。
そんな評判から、人々は彼を「花の画家、ファンタン=ラトゥール」と呼びました。
ラトゥールの絵画で特に有名なものはバラの絵でしょうか。
この画家の名を冠したオールド・ローズ『ファンタン=ラトゥール』まで存在するほど、彼の描くバラは世界中で愛されています。
花の画家と呼ばれるほどですから、もちろんバラ以外の花も魅力的に描きました。
今回ご紹介する『花と果物のある静物』もその中の一つ。
描かれた花についての詳細は語られていませんが、花瓶手前にしな垂れている薄いピンク色の花はライラック(リラ)ではないかと言われています。
4月ごろから初夏にかけて開花し、春の訪れを告げる花。
ライラックの甘い香りや、暖かな春の空気感で胸がいっぱいになるような優しい絵画です。
花言葉まで春爛漫 ラトゥール風ブーケ
語らずとも、描かれている花から連想される「春」。
春の花を飾れば、毎日過ごしている部屋も自然と暖かな雰囲気に変わるはずです。
ライラックが切り花として店頭に並ぶのは大体2~3月ごろから。
今回は、一足先に春の花として出回り始めているチューリップとスイートピーで、ラトゥール風ブーケを活けてみました。
チューリップの花言葉は「恋の宣言」、「前進」。スイートピーの花言葉は「門出」。
どちらも、春の新しい出会いを応援してくれるような可愛らしい花言葉を持っています。
今回花瓶代わりに使用したのは、お気に入りだけど特別な日にしか出番のないヴィンテージガラスのゴブレット。
きれいなグリーンに一目惚れして購入したのですが、普段は食器棚の奥でひっそりと眠っています…。
可愛いけど日常使いはなかなか…というグラスやコップ、皆さんも一つは持っているはず。
この機会に、ぜひ花と合わせて飾ってみてください。
チューリップは、切り花になってからも様々な表情を見せてくれる楽しい花です。
日が昇るとゆっくりと花びらが開き、沈むと閉じる。
首を垂れているかと思えば、翌日にはピンと伸びていたり…
びっくりするほど自由に動き回るので、安定感のあるゆったりとした花瓶に活けるのがおすすめ。
シンプルな花瓶に一輪だけ飾るのも、花本来の美しさが際立って素敵ですね。
厳しい寒さはもう少し続きますが、花屋には少しづつ春を感じる花が並び始めています。
(わたしの家の近所のフラワーショップには、なんとすでにサクラの枝まで…!)
皆さんもぜひお好きな花を飾って、お部屋の中から春の空気を先取ってみてくださいね。
家でもアートを楽しむ
近年、著作権の切れた美術品をpublic domain(著作権フリー)で公開する美術館が増えてきています。
今回ご紹介した『花と果物のある静物』もその一つ。
この絵を所蔵するメトロポリタン美術館の公式サイトでは、37万点以上の作品を無料で閲覧、ダウンロードすることができます。
メトロポリタン美術館公式サイト(https://www.metmuseum.org/)
絵画だけでなく、花瓶や宝石など様々なジャンルの芸術品を見ることができます。
家でゆっくりと過ごす時間にもぴったりなので、ぜひ活用してみてくださいね。
「花と絵画」、次回の更新は2月上旬頃を予定しています。
美術館に遊びに行くような気軽な気持ちで、ぜひまたご覧ください。